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アメリカでのビジネス

「企業支援銀行−投資家も唸るビジネスプラン物語」

  • 著者:長野慶太
  • 出版社:金融財政事情研究会
  • 価格:¥2,100 (税込)
  • amazon.co.jpにカスタマーレビュー有り

著者である長野 慶太氏(ペンネーム;本名は、荻原 秀介氏)は、ネバダ州ラスベガスに在住の国際会計士であり、また日米ビジネスコンサルタントとして、Nevada Japan Conference, Inc. (www.USJAPAN21.com) を創業し、代表取締役社長を務めておられる方です。 本書は、長野氏が初めて用いたという体験擬似小説の技法を取っており、日本での三井銀行勤務時代の経験を巧みに生かしながらも、小説としてのテーマは、現在の筆者が日常的に深くかかわっている「日本の中小企業がアメリカに進出する」際の問題点に的を絞って書かれています。

長野氏によりますと、本書で想定している読者層が実は3つあるとのことでありまして、まず一番目には、日本にいる全国の銀行員、2番目として、日本全国の中小企業経営者及び幹部社員、そして最後の3番目としては、アメリカ在住の日本人で、会社経営することをいつの日か夢見ているものの、「何から始めてみてよいのか皆目分からず」混沌とされている方に向けて書かれたということです。 そのためにより現実的で、徹底的に具体性を持たせるために、あえて小説形式の手法を取り入れたという次第です。

本書の中には、「リレーションシップ・バンキング」「コンサルティング・バンク」「モーゲージ・バンク」などの目新しい言葉も数多く使われていますが、小説部分とは別にていねいな解説のページが各章ごとに設けられており、言葉の意味や日米金融関係の背景情報も豊富に説明が施されていて、私のように金融業界に疎い者であっても、十分に最新の金融情報が手に取るように理解できるというのが本書のユニークな特徴となっています。

地銀の一つである京浜銀行羽田支店の奥井支店長(オヤジ)と融資外国課次長の石原、東京都大田区にある中堅機械製造メーカーである村山製作所の村山社長と事業本部主任の勝田、そして対米進出コンサルタントで、ラスベガス在住の長谷川という架空ではあるものの、思わず親近感を覚えさせてしまうキャスティングには、この小説のエッセンスが十分に吹き込まれていることを読者はすぐにお察しになるものかと思われます。

確かにアメリカ進出をお考えになっている日本の中小企業経営者の方やその会社の幹部社員の方々には、まさに絶好の書ということになるでしょうが、長野氏がおっしゃるように、アメリカで将来起業を思い描いているすべての方々にとりましても、稀有な参考書となることは間違いないものと思います。 先月ご紹介いたしました、シカゴ 太郎氏の「日本の再生は起業のチャンス」(アメリカ式事業の始め方・経営の考え方)とあわせて、起業の夢をお持ちの方々にぜひとも一読されますことをお奨めしたいと思います。

「日本の再生は起業のチャンス」(アメリカ式事業の始め方・経営の考え方)

  • 著者:シカゴ 太郎
  • 出版社:近代文芸社
  • 価格:¥1,838 (税込)

本書の著者は、大手総合商社でのバリバリの商社マンのポジションを辞職なさり、1979年にシカゴでITA, Inc. を起業された岸岡駿一郎氏で、ご自身の会社設立ならびに他のベンチャー企業への立ち上げ支援などのご体験から得た貴重なアドバイスとメッセージをアメリカならびに日本でご活躍されているビジネスパーソンに贈る形として本になさったものです。

大手一流会社の看板を背負っていれば、日本ではおおかたの場合、その看板で仕事はできるものの、いったん海外に出てしまえば、海外にある日本企業とだけ仕事をするなら別の話ですが、大会社の肩書きや名刺はまったく頼りにはならず、特にアメリカにおいては過去の実績や経歴というよりは、現在(そして将来)その本人や会社が持っている専門能力やスキルなどに重点を置いて取引するかどうかを決める傾向が圧倒的に強いわけです。

そのような環境のど真ん中に置かれた岸岡氏が、ご自分で起業された体験を通じて感じたアメリカ社会の懐の深さや起業することに対しての意義やそのモチベーションを、本書を読んでいる私のためにあたかもエールを贈ってくれているかのような錯覚を思わず覚えてしまいました。 しかも氏の"日本人として海外生活経験した者が、起業に不可欠な条件や能力を満たしている"という指摘も面白い着眼点ではないかと思いました。

本書によりますと、アメリカでは、1年間に平均約60万社が毎年新しく起業され、5年間でそれが5万社に減り、10年間では、3万社、約5%にまで減るのではありますが、それでも少なく見積もっても年間約100万人の新規雇用者が起業する新会社によって創出されているという統計的指摘には、確かにその辺がアメリカの底力なのかなと思わず唸ってしまいます。

アメリカのそのような起業に対する事情をすぐに日本に当てはめることは難しいにしても、本書の中にはさまざまなヒントに触れられていますので、日本でこれから将来新しい会社の立ち上げを考えていらっしゃる方、ならびにアメリカに来られて現在お仕事をされている方などにとりましては、大変参考になる啓蒙書となるのではないでしょうか。アメリカで起業された大先輩としての氏の貴重なご自身の矜持と薫陶とを、読後の私としては大いに感化を受けたような気がします。

「豆腐バカ 世界に挑む」

  • 著者:雲田 康夫
  • 出版社:光文社ペーパーバックス

先日、ポートランド南部のTualatin(チュアラティンと発音)市にあります、Pacific Nutritional Foods社(PNF)をご訪問し、工場長のタイガー堀井氏にお会いしてきました。PNF社は、日本の森永乳業(株)の子会社Morinaga Nutritional Foods社(カリフォルニア州トーランス市)とオレゴン州のPacific Foods社の合弁会社で、(アメリカにお住まいの日本人の方には)お馴染みの“Mori-Nu Tofe”を製造している清潔で最新鋭の豆腐製造工場です。堀井氏とのお話の中で、Morinaga Nutritional Foods社、初代社長の雲田康夫氏が書き下ろして、つい最近出版されました本書「豆腐バカ 世界に挑む」をご親切にも私に進呈してくださいました。堀井工場長には、今月の「翻訳トーク」で早速書評としてご紹介させていただきますという約束をその場でさせていただきましたので、今月は、Mr. Tofuこと、雲田氏の汗と涙と感動のドキュメンタリータッチによるアメリカ商売物語です。

今でこそ、アメリカの主なスーパーマーケットには、森永乳業が開発した無菌包装パック(英語では、Aseptic Packといわれる)に入った12ヶ月(開発当時は10ヶ月)室温で長期保存が可能なMori-Nu Tofeが「野菜売り場」で陳列されているのはごく普通に見るスーパーでの馴染みの光景となりましたが、それまでに雲田氏がアメリカで一般消費者に豆腐を知らしめようとして、マーケティングと販促に聞きしに勝る情熱とロマンとを傾注してこられた、本書にあるような営業努力と経営努力は、本書を読むまで知る由もありませんでした。(弊社は、PNF社の工場立ち上げ時からお仕事をさせていただいていたにもかかわらず、でありましたので、誠に恥ずかしい次第です。)

雲田氏のアメリカでの豆腐ビジネスに賭ける情熱と熱意が本書すべてのページの行間に脈々と波打って、その汗の匂いや涙の大きさまでが伝わってくるような文章にまずは圧倒されてしまうのですが、随所に苦しい中でもユーモアの感覚を忘れずに、それでも本人は感情を抑えながらも、アメリカで豆腐がなぜなかなか一般消費者に受けいれられないのかを冷徹な視点で分析をしているのも見事というほかないと思わずにはいられませんでした。しかも、本書を読めば、アメリカに進出なさっている多くの日系企業様の方々にもアメリカでの日系企業が取るべきアイデア一杯のマーケッティング手法や企業経営方針が随所にちりばめられておりますので、これはもう立派な経営実務書とお呼びしてもよい実践的レベルの内容であるかということも間違いなく言えるかと思います。

人口減少化時代を迎え、消費の成熟と国内市場の頭打ち現象が今後確実に現実の切実な問題となってくる日本の中で、国内市場だけにとどまって商売をされてきた企業には、大変参考になると同時に、多くの日本の中小企業に対してもひとつの今後進むべき道しるべを投げかけてくれているような気がしてなりません。とりわけ、日本の食品メーカーや伝統的製造業者の方々には、最も近いところで、雲田氏の目線が即刻役に立つのではないかと自問するのはきっと私だけではないだろうと考えます。

雲田氏のアメリカでの豆腐屋商売に賭けるモーレツぶりには本当に脱帽されますが、会社の従業員との関係ではかなりの鬱積や不満があったことも率直に書かれておりまして、これはむしろ反面教師として受け止めておかれた方がよいのかもしれません。アメリカでの社員へのコミュニケーションや活用方法は、雲田氏の豆腐への情熱ほどは伝われず、むしろ空回りをしていたところもあったのかなとも思います。ことほどさようにアメリカで、経営の中で人を使いこなしていくことの難しさという点が裏表なく、よく書かれているのも感心しました。本書を読んでいてもこのようなところにどうしても最初に目がいってしまうのは、私が日頃から人事管理コンサルティングを日系企業の皆様にご提供しているからということなのでもありますが。

とにかく、久し振りに釘付けになって一気読みさせられた書籍でした。アメリカで企業経営をなさっている方、幹部社員の方々、日本にいて経営や営業のヒントを探しあぐねている方々にとりましては、必読の書として情熱を持ってお薦めさせていただきます。